消えそうな日。

(※シリアス注意です。)






真夜中の零時

沖田は一人縁側でたそがれていた。

明かり一つない景色

鈴虫の鳴き声以外何も聞こえない静寂。

一人だけの時間。

沖田の一番好きな時間だった。
こうして一人暗闇で考え事をするのが。

今の俺はどんな顔をしているだろう。
ふと考えたがそんな事どうでもいい、と思ってため息をついた。
どうせ暗闇で誰も見えちゃいねぇし、第一誰も起きてる奴なんか・・

「いるぜ?」

沖田がふとつぶやくと暗闇の中から他の声が返してきた。
はっとして振り返るとうっすらと人影が見える。
顔までは見えないが、沖田には誰かわかっていた。
全てお見通しというような得意げな声音、体から香る独特の風のような涼しげな香り。
真撰組副長土方十四郎。
いきなり土方が現れて少し動揺した。
「なんですかぃ?」
内心を悟られないように平常心なふりをする。
「一隊長が一人でうろうろ出歩くんじゃねぇ。」
「個人の自由までとりしまらなけりゃならんのですかィ?
あんた気張りすぎでさァ。」
「気張ってるのはおまえの方じゃないか?」
何気なく返される言葉に息が詰まる。
いつも人の確信に突く。だからキライなんだ、コイツ。

シュっとライターの音がする。
「最近のお前、浮世離れしてるぜ。」
そういいながら加え煙草に火をつける。
一瞬周囲が明るくなる。
その明かりに自分の顔が照らせれたのがわかる。
動揺が恐怖に変わる。


今の俺はどんな顔をしてる?


「泣きそうな顔。泣きたくても泣けねぇ顔。」
土方はそういって煙草を一口吐いて、再び暗くなった空間で、沖田の顔に手を近付けた。
沖田の横に座り、顔に触れた瞬間沖田はビクっと神経を尖らせた。

頬を親指で優しくなでられると自然に、涙が流れてきた。
一度頬を伝うと、せき止められていたものが一気に溢れてきてポロポロと頬を伝い始めた。

暗闇の中でいつも考えていた事。
仕事という名目で人を斬る自分。
自分が絶った命達。
それで得られる勲章。自分の居場所。
それに何の意味がある?
自分の価値が何所にある?
生きてるのと死んでる区別がつかない。
いっそこの闇の中に消えてしまえれば良いのに。

そんな事をずっと独りで考えてて、

アンタに見られた。

一番見られたくなかった。
何でもお見通しで、すかしてて人を馬鹿にして、自分を見つめることが出来る
、強いアンタにはこんな弱い自分見られたくなかったのに。

見られたくなかったのに.....

「もう独りじゃないから。」
その一言と、顔を包む暖かさに初めて本当に心が落ち着くのを感じた。
安心したら、色んな物が一気にこみ上げてきて、声を漏らして泣いた。
「っく、っう、うっうぅ・・!」
土方は沖田の頭を子供のようによしよしと撫でるとそのまま自分の腕にすっぽりと沖田を包んだ。

きつく、しっかり抱きしめられている事で安心した。
でもいつもの自分では絶対考えられない状況だと思い、
悔しかったので絶対に顔が見えないように土方の胸に顔をくっつけた。

土方の香りがする温もりの中、
沖田は心の中で唱えていた。

特別なんかじゃない。
たまたまここにコイツがいて、こういう状況になっただけだ。
コイツには何の感情もない。

でも、

消えてしまいたいと思って

アンタが現れたとき

頬に触れられたとき

抱きしめられて、アンタの香りに包まれた時、

消えるならこの腕の中で消えたいと思った。


だけどそれを認めれば自分の感情を認めなければならないから、

俺はこう思うしかない






『特別な感情なんかじゃない。

きっと暗闇のせい

暗闇のせいなんだ・・・・・。』








fin...
06/08/05

『沖田総受祭に参加させて頂いたものです。』


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